インボイスを出せない外注先への支払い、消費税の「差し引ける分」が8割から7割に!
解説:Nori社長11歳・経営者1年生(架空のキャラクター)
ぼくが勉強したことを、むずかしい言葉を使わずに教えるね。約11分で読めるよ!
営業代行やSNS運用、動画制作をフリーランスに頼んでいる経営者の方へ。2026年10月から変わった消費税の経過措置と、フリーランス側の2割特例・3割特例を、11歳で経営者1年生の「Nori社長」が、国税庁の資料をもとに図と例え話でやさしく解説します。
この記事の要点
- インボイス発行事業者ではない相手(免税事業者など)からの仕入れで消費税分を一定割合差し引ける経過措置が、2026年10月1日から80%→70%に。2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月からは差し引けない
- 80%と70%のどちらを使うかは仕入れの時期で判断し、仕事(役務)の場合は原則として仕事が全部終わった日で決まる
- 個人事業者の2割特例は令和8年分の申告まで。令和9年分・令和10年分は条件を満たせば3割特例(法人は対象外)
- 取引条件を見直すときは外注先と十分に協議する。一方的な値下げや消費税相当額の不払いは、独占禁止法や取適法などの問題となるおそれがある
目次(気になるところから読めます)
※この記事は、国税庁などが公表している資料をもとにした一般的な情報提供です。当社は税理士事務所・法律事務所ではありません。個別の判断は、税理士や弁護士などの専門家にご相談ください。(情報の確認日:2026年10月20日)
30秒でわかる結論
- インボイスを発行できない相手(免税事業者など)に払ったお金にふくまれる消費税分は、本来は差し引けません。ただし特別に一定の割合だけ差し引ける「経過措置」があります。
- その割合が、2026年(令和8年)10月1日から80%→70%に変わりました。その後は2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月からは差し引けなくなります。
- フリーランス側の「2割特例」は個人事業者の場合、令和8年分の申告まで。令和9年分・令和10年分は、新しくできた「3割特例」が使えるようになります(使える人には条件があります)。
- 発注する会社は、相手がインボイス発行事業者かどうかを確かめ、価格などを見直すときは相手と十分に話し合うことが大切です。一方的な値下げは、独占禁止法や取適法などの問題になるおそれがあります。
Nori社長の「おかえしシール事件」でわかる経過措置
(例え話です。実際の判断は個別の事情によります。「シール」は消費税の仕入税額控除を、「先生が決めた特別ルール」は経過措置を、わかりやすくするためのたとえです)
図でわかる:割合はいつ、どう変わる?
ルールの中身(国税庁の資料のポイント)
そもそも、なぜ「割合」の話になるの?
消費税の申告では、売上げにかかる消費税から、仕入れや経費にふくまれる消費税を差し引いて、納める税額を計算します(これを「仕入税額控除」といいます)。2023年10月に始まったインボイス制度では、差し引くために、原則として相手が発行したインボイス(適格請求書)の保存が必要になりました。
そのため、インボイスを発行できない相手、つまりインボイス発行事業者の登録をしていない免税事業者などに払ったお金については、本来は消費税分を差し引けません。ただし、急な変化をやわらげるために、一定の割合だけ差し引ける経過措置が設けられています。
何が変わったの?(7・5・3割控除)
令和8年度の税制改正で、この経過措置の期限が2年延長され、割合が次のように見直されました。
- 2023年(令和5年)10月1日〜2026年(令和8年)9月30日:80%
- 2026年(令和8年)10月1日〜2028年(令和10年)9月30日:70%
- 2028年(令和10年)10月1日〜2030年(令和12年)9月30日:50%
- 2030年(令和12年)10月1日〜2031年(令和13年)9月30日:30%
- 2031年(令和13年)10月1日から:差し引けない
改正の前は、2026年10月から3年間50%、その後0%となる予定でした。国税庁の資料では、この新しい仕組みを「7・5・3割控除」と呼んでいます。
この経過措置を使うには、相手から受け取った請求書等(区分記載請求書等と同じような事項が書かれたもの)の保存と、経過措置の適用を受ける旨(「80%控除」「7・5・3割控除」を受ける課税仕入れである旨)を書いた帳簿の保存が必要とされています。
※あわせて、ひとつの相手(インボイス発行事業者以外)からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分にはこの経過措置が使えないこととされました。2026年(令和8年)10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
80%と70%、どちらを使うかはいつで決まるの?
国税庁のQ&Aでは、仕入れをした時期で判断するとされています。そして、仕事(役務)をお願いした場合は、原則としてその仕事が全部終わった日が仕入れの日になります。
Q&Aの例では、2026年9月21日から受けていた仕事が10月20日に完了し、10月31日に代金を払う場合、仕入れの日は10月20日になるので70%で計算するとされています。払った日ではなく、仕事が終わった日で考える点がポイントです。なお、商品を買った場合は、原則として引き渡しを受けた日で判断します。
フリーランス側の「2割特例」と「3割特例」
インボイス発行事業者の登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人は、「2割特例」を使うと、納める消費税を売上げにかかる消費税の2割にできます。この2割特例は、令和8年9月30日の属する課税期間で終わります。個人事業者でいえば、令和8年分の確定申告までです。
その後、個人事業者については、令和9年分と令和10年分の申告で、納める消費税を売上げにかかる消費税の3割にできる「3割特例」が新しく作られました。主な条件として、個人事業者であること、インボイス発行事業者の登録を受けていること、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどがあります。法人は3割特例を使えません。
また、2割特例や3割特例を使った次の課税期間には、その申告期限までに届出書を出せば、その期間から簡易課税制度に切りかえられる「円滑な移行措置」も設けられています。
例(仮の数字です):売上げにかかる消費税が10万円の人なら、2割特例では2万円、3割特例では3万円を納める計算になります。実際の税額は、条件や申告の方法によって変わります。
ひと目でわかる:話し合いで気をつけたいこと
✕ 問題になるおそれがある例
- 約束した金額で仕事が終わった後に、「免税事業者だったから」と消費税相当額の一部または全部を払わない
- 「登録しないなら価格を下げる。それもいやなら取引を考える」と一方的に伝える
- 相手が課税事業者になって価格の相談をしてきたのに、話し合いに応じず、一方的に単価をすえ置く
- 相手が価格の維持を求めたのに、理由を書面やメールなどで伝えずに価格を引き下げる
○ 基本的な考え方
- 相手に、インボイス発行事業者になるようお願いすること自体は、問題にならないとされています
- 取引条件を見直すこと自体も、直ちに問題となるものではないとされています
- 見直すときは、相手と十分に協議し、こちらの都合だけで低い価格を決めない
※公正取引委員会の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る取適法等の考え方」、フリーランス・事業者間取引適正化等法のQ&Aにもとづきます。取適法(中小受託取引適正化法。令和8年1月1日施行、旧・下請法)やフリーランス・事業者間取引適正化等法が適用されるかどうかは、取引の内容や会社の規模などによって変わります。
気をつけたいこと・今からできる準備
「払う日」ではなく「仕事が終わる日」で考える
月ごとの運用代行や、納品のある動画制作などは、いつ仕事が完了したことになるかで、使う割合が変わることがあります。2028年10月には、70%から50%への切りかわりもあります。契約書や発注書で、作業の期間や完了・納品のタイミングを分かるようにしておくと、後から確認しやすくなります。
帳簿の書き方をそろえる
経過措置を使うには、帳簿に「7・5・3割控除」などの適用を受ける旨を書くことが必要とされています。経理の担当者や税理士と、書き方をそろえておくと安心です。
自社の申告方法を確認する
国税庁の資料では、簡易課税制度や2割・3割特例では、仕入れの消費税額を実額で計算しないため、インボイスの保存は不要とされています。そのため、自社が一般課税・簡易課税のどちらで申告しているかで、この経過措置がどれくらい関係するかが変わると考えられます。自社の申告方法は、税理士にご確認ください。
Nori社長が今日からやること
- 外注先の一覧をつくる:営業代行、SNS運用、動画制作など、個人にお願いしている仕事と、相手がインボイス発行事業者かどうか(請求書に登録番号が書かれているか)を書き出す
- 「仕事が終わる日」を確認する:契約書や発注書で、作業期間・完了日・納品日が分かるようになっているかを見直す(営業代行と契約する前に確認したいことは「営業代行の「成果報酬」は本当に安心?」でも紹介しています)
- 経理・税理士と話す:自社の申告方法と、帳簿への書き方、70%になったことの影響を確認する
- 外注先と話し合う場をつくる:条件を見直したいときは、一方的に通知するのではなく、相手の事情(2割特例・3割特例など)も聞きながら協議し、決まったことは書面やメールに残す
よくある質問
9月から始まって10月に終わった仕事は、80%と70%のどちらですか?
国税庁のQ&Aでは、仕事(役務)をお願いした場合、原則としてその仕事が全部終わった日で判断するとされています。Q&Aの例では、9月21日から受けていた仕事が10月20日に完了した場合、70%で計算するとされています。個別の取引でどうなるかは、税理士にご相談ください。
外注先が免税事業者のままなら、その分の金額を下げてもいいですか?
公正取引委員会のQ&Aでは、取引条件の見直し自体は直ちに問題とはならないとしつつ、十分に協議をし、仕入側の都合だけで低い価格を設定しないよう注意が必要とされています。また、すでに約束した金額から、免税事業者であることを理由に消費税相当額を払わないことは、取適法の対象となる取引では「代金の減額」として問題になる例が示されています。個別のケースは、弁護士などの専門家や公正取引委員会の相談窓口にご相談ください。
外注先にインボイス登録をお願いしてもいいですか?
お願いすること自体は問題にならないとされています。ただし、「登録しなければ価格を下げる」「応じなければ取引をやめる」と一方的に伝えることは、独占禁止法などの問題となるおそれがあるとされています。
2割特例が終わると、外注先の負担はどうなりますか?
個人事業者の2割特例は令和8年分の申告までで、令和9年分・令和10年分は、条件を満たせば3割特例を使えます。2割特例のときより、納める消費税の計算上の割合は上がります。簡易課税制度への切りかえなど、どの方法がよいかは人によって異なるため、外注先にも税理士への相談をすすめるのがよいでしょう。
まとめ
免税事業者などからの仕入れについて差し引ける割合は、2026年10月1日から70%になり、この先も段階的に下がっていきます。フリーランス側でも、個人事業者の2割特例は令和8年分で終わり、令和9年分・令和10年分は3割特例に変わります。発注する会社にとって大切なのは、外注先の状況と自社の申告方法を確かめたうえで、条件を見直すときは相手と十分に話し合うことです。
当社は、営業代行とThreads運用代行を行っています。外注先との進め方や運用体制についてのご相談を承ります。なお、個別の税務・法務の判断は当社では行いません。専門家にご相談ください。
出典(一次情報)
- 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ(令和8年度税制改正特集)」(令和8年9月)※経過措置の割合:令和8年10月1日から70%
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026004-066_01.pdf - 国税庁 インボイスQ&A 問113-3「令和8年10月1日前後の取引に係る免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/113-3.pdf - 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年5月改訂)※7・5・3割控除、1億円の控除限度額(令和8年10月1日以後に開始する課税期間から)、3割特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/pdf/0026004-099-01-1.pdf - 国税庁 インボイス制度特設サイト「令和8年度税制改正特集」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm - 国税庁 インボイスQ&A 問115-2「3割特例の適用ができない課税期間」・問117-3
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/115-2.pdf
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/117-3.pdf - 財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和8年1月30日改正)
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html - 公正取引委員会「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る取適法等の考え方」(取適法の施行日:令和8年1月1日)
https://www.jftc.go.jp/file/invoice_jirei.pdf - 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」Q116
https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited/fllaw_qa.html
情報の確認日:2026年10月20日。制度は変わることがあります。最新の情報は国税庁・公正取引委員会のページでご確認ください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は税理士や弁護士などの専門家にご相談ください。Nori社長は、この記事のために作った架空のキャラクターです。